開催報告:環境科学院 × RCE連続講座:テーマ「国際」を開催しました。

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アフリカについて説明する岡田さん

連続講座(北大環境科学院・実践環境科学演習Ⅱ)「持続可能な社会づくり~国際交流・国際支援の視点から~」を開催しました。本講座は、RCE北海道道央圏の協働プロジェクトの1つである「大学と RCE 参加団体の協働による持続可能な道央圏に向けた人 材育成 」の一環として北海道大学大学院環境科学院及びRCE北海道道央圏の共催で行っています。
7月4日(月)、環境科学院において第1回目を開催しましたのでご報告します。

第1回目の講師は、RCE北海道道央圏協議会のメンバーでもある一般財団法人北海道国際交流センター(HIF)の岡田朋子さんをお迎えしました。岡田さんはHIFの職員でありながら、NGOとしてアフリカ・ウガンダで女性たちの経済的な自立支援等に取り組まれています。

~以下、岡田さんのお話です~
一般財団法人北海道国際交流センター(HIF)ではこれまで、国際交流を目的としてきましたが、今では社会貢献や多文化共生を実現するための手段として国際交流を行っています。ITが盛んになると海外の情報が簡単に手に入るようになり、国際交流が下火になっていきました。国際交流は目的ではなく、人材育成や地域発展、生活困窮者支援、多文化共生などの実現のための手段へと移っていきました。大きな視野で持続可能な社会をつくることを目的としています。

国際協力とNGOについて
2012年からアフリカのウガンダで女性の自立支援活動を実施しています。アフリカは大きく、「アフリカ」という言葉でひとくくりにはできません。ウガンダは赤道直下にある国で、日本人が持ってきた米を食べるようにもなっています。彼らにとって肉料理はおもてなしです。ウガンダは内戦の歴史があり、当時は大虐殺も起きました。少年兵が駆り出され、少女は誘拐されました。多くのNGOは激戦地となった北部へと支援に入ったため、東部の復興が遅れています。
料理の選択肢が無いほど作物の種類が少なく、主にキャッサバを食べています。このため、栄養不足、乳児死亡率が高いのが特徴です。また、1990年代にAIDSが蔓延し、多くの孤児が生まれてしまいました。

なぜ女性を支援するのかというと、女性は家庭を守るという意識が強いからです。男性は稼いだお金を使いこんでしまうことが多いのが現状です。そこで、女性のための洋裁教室を開催しています。当初は教室を開く場所がなく、お金もありませんでした。そこで日本からの支援としてコンテナを購入し、教室として使い始めました。しかし、実際に使ってみるとコンテナの中は非常に熱くなることが分かりました。そこでコンテナに窓、屋根を作り、外壁も白いペンキで塗り替えるなどの支援も実施しました。今では快適にコンテナの中で洋裁教室を開くことができています。

函館の学生さんが休学し、半年間ウガンダへ事業を実施するために行ってくれました。彼らは自ら考えたレンタルミシン事業をスタートさせました。洋裁学校で技術を身に着けた女性の中から、希望者に自転車とミシンをレンタルするというもの。レンタルした女性はミシンを自転車に積み、20km以上離れた市場まで行き、修繕等の仕事をしてお金を手にすることができます。この事業による成果としては、コミュニティの問題を自分たちで解決する意識が向上したことです。また、学生さんたちが村の人たちと話し、自ら考えて実施したことも大きな成果です。

国際支援や協力を行う上での留意点として、現地の人の思いに寄り添って目的を明確化することが大切です。GiveからWin-Winの関係へ。
NGOとは、民間の立場であり、国や分野を問わない存在です。人権を扱うNGOが近年は増加傾向にあり、新しい分野として中間支援を行う組織も出てきました。MDGs(ミレニアム開発目標)、SDGs(持続可能な開発目標)を1つの指標として活動しています。
国際協力がなぜ必要なのか。特に途上国が抱える問題は1つの国では解決できませんし、世界共通の問題だと考えます。日本は様々な資源を海外からの輸入に依存していますし、国際協力には様々な関係者が関与しています。つまり、世界の問題は日本と関係しているのです。

質疑応答&全体ディスカッション

参加者:なぜ、ウガンダなのですか?
岡田さん:函館在住で、函館未来大学の先生をされているウガンダ人の方と知り合いになったのがきっかけです。
参加者:国際交流と国際協力は違うと思いますが、なぜ、HIFが国際協力をしているのですか?
岡田さん:他の分野に比べれば、国際交流と国際協力は近いです。国際交流の目的は異文化理解であり、国際協力 にもその要素は含まれています。

参加者:文部科学省のいう「グローバル人材」には違和感があります。リーダー教育などと正反対のイメージがあります。
岡田さん:立場によってグローバル人材のイメージが異なり、曖昧な言葉だと思います。
参加者:日本人が作りだした言葉のような気がしますね。
参加者:確かに海外で「グローバル人材」という言葉を聞いたことがありません。“International”なら分かる気がします。グローバルだと「全球」と言う意味で、「1つになる」、「均質」というイメージ。日本はその辺りの表現に失敗している気がします。
岡田さん:日本政府はグローバル人材を作ろうとしていますが、日本の企業の方はグローバル人材は使いづらいとおっしゃっていました。自分たちの色に染まってほしいという思いがあるようにみえますね。
参加者:国際社会では、言葉で理解しようとするため、いちいち説明が必要になります。日本企業は「何となく」で通す場合がある。グローバルな視点を持つ人は説明を求めようとするので、日本企業からは敬遠されるのかもしれません。
岡田さん:企業側が変化する必要があるのかもしれなせんね。
参加者:教育でグローバル人材を育てようとしているが、社会がグローバル人材を求めていなければ意味が無いのでは。日本にいたくないと正直思います。住みたいと思う日本に変えるか、自分が移動するしかない。

参加者:今の日本について自分自身は社会からずれている気がします。長く会社にいるのが良いという考えが理解できません。型にはまりすぎているような。固まった考えの中にずっといる気がします。
岡田さん:多様性が求められる社会になっていくのでは。
参加者:多様性をすべて受け入れるのは違うと思っています。線引きをどうするか考える必要があると思います。
参加者:日本の中にいると日本の常識しか分からない。他の地域に行くと違う価値観に触れられる。違う価値観の中でも助け合っているように見えます。

参加者:国際支援することで、日本の価値観を持ち込んでしまっているのでは。
岡田さん:現金収入はいらないのではと思ったり。正直迷います。ただ、お金さえあれば助かる命も。ただ、その地域の人がどうするか決めることだと思っています。
参加者:「地域」の判断であると、どう決めるのですか?
岡田さん:地元のカウンターパートに決めてもらっています。

参加者:洋裁教室の長期的影響についてどのように考えていますか。
岡田さん:一年に10人くらい卒業しています。そのうちの5人がある程度の収入を得ています。
参加者:完璧に収入を得ている人が少ない最大の理由は何ですか。
岡田さん:市場での競争が激しいことと、この地域が市場から遠いことが挙げられます。学校の制服づくりの事業は収入になりつつあります。私たちがいなくなった後でも持続できるような仕組みが必要だと考えています。

参加者:急いではいけない。結果が伴わなくても長い目で見ることが必要なのではないでしょうか。子供たちが教育を受けたことへ感謝する気持ちになるには時間がかかるものです。成果は先にありますよね。
成果を急いではいけない一方で、ドナーは成果を求めてきます。ドナーの方を見てしまうと成果を無理に出そうとしてしまう。
参加者:岡田さんはどう落とし前をつけていますか。
岡田さん:女性たちは頑張っています。洋裁を習うことを楽しんでいます。成果をドナーに対してどう見せるかがこちらの課題ですね。

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「その土地の人々の価値観を大切にしたい」

岡田さん:皆さんに聞いてみたいことがあります。バングラデシュでの日本人殺害の事件等を受け、行き過ぎたナショナリズムの高まりや日本が内向きになることを懸念しているのですが、皆さんはどう思われますか。
参加者:僕自身はこの事件を受けて海外へ行きたくないという気持ちにはなりません。テロなどの事件に巻き込まれる時はどんなに準備していても巻き込まれます。外へ行かずに知るチャンスを失う方がもったいないと思いますね。
参加者:ナショナリズムが高まっている原因は、グローバリズム、国際化の反動からくるもののような気がしてなりません。イギリスのEU脱退もそう。逆に自分の人種について意識させられたのではないでしょうか。ナショナリズムとパトリオットのどちらが悪いか分からないですし、ナショナリズムが単純に悪いとも思えないです。
参加者:グローバリゼーションが進むことで国内的ダメージを受けていると思います。そこで割を食っている人がいるのでしょう。
岡田さん:貧困層の人の不満が爆発して事件が起きているのかと思いきや、バングラの事件も富裕層の若者が起こしました。世界の不平等さに対する怒りではないかと思います。

参加者:3カ月半、アフリカのトーゴで人道支援をしていたことがあります。そこで出会った現地の友人の村を訪ねた時、「俺たち貧乏だろう」と言われて困りました。彼らは幸せそうに見えたから。どういう視点で貧乏だと言ったのか。彼らは日常的にテレビで目にするフランスの家庭と比べているのだと思います。物質的な豊かさを幸せと思っているようでした。
岡田さん:学生たちもアフリカの人たちを見て、「笑顔で幸せそう」と言っていました。
参加者:日本などの先進国は、物は溢れていますが、実際に楽しんでいるのかと言うと疑問ですよね。何を幸せと思うのか。
目先のこと、西洋型の発展の仕方が良いと考えがち。その国、その地域らしい開発の仕方があると思います。
岡田さん:その土地の人々の価値観を大切にしたいですね。
参加者:日本の型にはまっている部分が嫌なだけ。何年か前にブータンの幸福度について話題になりましたよね。評価軸が違うだけではない気がします。
参加者:精神的な豊かさが必要ですよね。経済的なだけではなく。

岡田さん:国際的な視野を持つことで、自分の置かれた状況を見直す機会にもできます。開発と支援。以前、「机上の空論が嫌だ」という学生さんがいました。私は『机上の空論』も大切なこと、そんな風に問題意識を持って考えることが大切だと思います。
参加者:個々を大切にする持続可能な社会の実現には時間がかかり、辛い部分がある。二者択一ではないが、それを迫られる場面が多い気がする。
参加者:多くの学生にとって国際ニュースはコンテンツとして消費するだけです。そうではない人たちを巻き込んでいく必要があるのではないかと疑問に思いました。
参加者:できるだけ多様性を受け入れつつ、自分の理想に近づけたい。
参加者:個人的には多様な価値観を持ちたいです。自分とは違うタイプの人、世代の違う人との交流が好きです。ただ、大学にいるとほぼ同じ年代、知識を共有している人しかいません。閉鎖的に感じます。会社も同じだと思います。もっと高校や大学で自分と違う人と触れ合う機会があると良いと思います。
参加者:自分の国の問題をうまく解決していないのに、国際的な活動をしている人はどう考えるのでしょうか。昔からある課題だと思います。
なぜ、排外主義が悪いのでしょうか。国が外を向いていると思うから内向きになっている気もします。国民としての旨味がないから余計に内向きになるのでは。
参加者:日本は人種差別に対する教育がありません。実質的に脅威にさらされている状況でもないのに排外的になっていることが異常だと思います。
参加者:わたしはオーストラリア人ですが、日本にいて外国人扱いをされるのが面倒と感じることもありますが、恩恵も受けています。ただ、外国人に関する日本のマスメディアの扱い方に問題がありますね。白人、黒人、アラブ人など一定のイメージをつけるような。テロを起こすのは中東の人であり、「引っ越しをする外国人に注意するように」などという情報も流す際のイメージ画に中東の人らしき人物を描いたり。ちょっと信じられない。
岡田さん:日本人は固定観念が強いんですよね。

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