【ご報告】JANIC主催「新しい“国際協力”を考える グローバルな社会課題解決アクターが出会い、学び、発見する1日」

特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(JANIC) が1月18日、聖心グローバルセンター(東京都港区)において開催した「新しい“国際協力”を考える グローバルな社会課題解決アクターが出会い、学び、発見する1日」に参加してきましたので、そのご報告を簡単ですがさせていただきます。

JANICは、“国際協力やNGOはどうあるべきなのか、との問いに答えるため、国内外の社会課題について議論、学習し、解決のための連携が生まれる場となる会議を2019年度からスタートするにあたり、グローバルな社会課題解決に関わる多様なアクターが一堂に会する会議”を2019年度よりスタートさせる予定で、今回はそのプレイベントとして開催されました。JANICとは、NGOの中間支援組織であり、日本の大きな国際NGOが関係団体に名を連ね、政策提言や協働促進、NGOの組織強化などを行っています。会議の当日は、国際NGOだけでなく、博報堂などの企業やJICAなど約160名が参加したとのこと。正式な会議名称は未定のままスタート、最後のセッションで正式名称が発表されました。その名は“HAPIC(ハピック)”です。

キーノートセッション(13:15~14:40)では、「私たちの可能性~グローバルイシュー解決に向けて~」をテーマに、大西さん(ピースウィンズ・ジャパン代表理事兼統括責任者)、鵜尾さん(日本ファンドレイジング協会代表理事)、岩附さん(ACE代表/共同創設者)、谷山さん(JANIC理事長/日本国際ボランティアセンター理事)の4名が登壇され、若林さん(JANIC事務局長)をモデレーターに話が進みました。その中で印象に残ったお話を挙げておきます。
・SDGs(国連 持続可能な開発目標)ができ、国際から国内問題へもアプローチできるようになった。NGO(非政府組織)からCSO(Civil Society Organization:市民社会組織)になっていくのだろう。
・組織が大きくなっていくことも大切だが、大きくなるだけでは変わらない。小さい組織が連帯することで変えていける。
・AI(人工知能)などの新しい科学技術が社会で使われていくなど、新しい変化に追いついていかないといけない時代。
・国際協力NGOを自らが特別視していたのではないか。(課題解決に挑む)プレイヤ―はたくさんいる。自ら変わっていかなくては。

コーヒーブレイク(14:40~15:05)では、JANIC会員でもあるアジア学院で作られたお菓子やニンジンジュースなどが提供されました。長めのブレイクの時間を取り、参加者間の交流を促すことが狙いだそう。こういう時間は大事ですね。お陰さまで、何人かの方と新しくお知合いになることができました。

ブレイクアウトセッション(15:05~16:35)では、1.災害から私たちは何を学び、活かすのか~新たな視点と事業の可能性~、2.「子どもと若者のセーフガーディングを我々のスタンダードに~子供へのあらゆる搾取や不適切行為と戦うために~、3.インターネットを超える?ブロックチェーン技術は国際協力現場で利用できるのか!?、4.なぜ日本にはメガNGOが存在しないのか?~NGOの規模拡大・合併を考える~の4つのセッションが設けられました。4のセッションに参加しました。
期待した内容とは違いましたが、中山さん(国士舘大学大学院グローバルアジア研究院准教授)による、国際協力をプロダクト・ライフサイクル(製品寿命)の視点から考え、「国際協力が1863年に発明されてから150年が過ぎ、寿命なのでは」というお話は興味深かったです。プロダクト・ライフサイクルとは、世の中に商品が供給され、その商品が売れると競争が激化し、業界再編が起き、所品が成熟化し、新しい商品が登場し、衰退化するというプロセスを指す言葉だそうです。国際協力は衰退化しているのでしょうか。
もう一人の登壇者である千賀さん(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン専務理事・事務局長)とモデレーターの小松さん(シャプラニール=市民による海外協力の会 事務局長)の3名のお話の中で、NGOは多様であり(同じ商品を提供していない?)、合併するのではなく連携していくのだろうと。これからは、それぞれの得意分野を持ち寄って、テーマごとの問題を解決するといった「コレクティブ・インパクト(社会変化の共創)」によるアプローチが取られていくだろう、というお話がなされました。この他、「企業は喰えないから合併するが、NGOは喰えないと食わない」「東京を通さない国際協力をやっていきたいという地方の希望がある」「複数のNGOで管理部門を共有かするのはどうか」「NGOも経営力をつけなくては」「個々のNGO強化だけでなく、NGOを支援する側の中間支援組織の体力強化や支援する仕組みの強化が必要では」というお話も出ていました。

クロージング(16:45~17:30)では、各セッションのモデレーターにより報告がなされ、最後に来年度からスタートする会議の正式名称が発表されました。その名称は、”HAPIC(ハピック):Happiness Idea Conference” 。英国の「Bond 」、米国発祥の「InterAction」がモデルだそうです。

HAPICとは
私たちは、なんのために課題を解決するのだろう。
JANICは、想う。
きっと、だれかの、もしはく、なにかの、
しあわせを創造するためだ、と。
HAPICは、課題の先にある
みんなのしあわせについて話し合うカンファレンスです。
実現したい「しあわせ」が共有できれば、
もっと新しい仲間がみつかる。もっとつながりは強くなる。
そして、それは、これまで以上の力になる。
だれかをしあわせにしたい、という想いは、
誰もが抱いている原動力なのだから。
さあ、具体的なしあわせを描いていこう。
課題解決の先にある未来が見えてくれば、
アイデアはもっとシャープになる。議論はもっと深まる。
きっと、課題解決に自ずと近づくだろう。
もしも、迷ったときは立ち戻ってほしい。
“私たちはどんなしあわせをつくりたいのか”を。

全体の感想
国際的課題やトレンドについて、情報格差は首都圏と地方ではあまりないのかもしれないというのが、今回参加してみての実感でした。RCEは世界166の地域にメンバーがおり、毎年のように顔を合わせて情報交換していますし、RCEHCメンバーは直に海外での活動を展開している組織も多く、国際的課題や最新の情報を足で稼がれている方々も多いのが現状です。ただ、今回のように国内において関係者が一堂に会すような場は、国際課題のトレンドの確認や同じような課題意識を持つ者同士が何について連携すればよいのかを考える機会として意義はあると感じました。
話題に挙がっていた「SDGsが誕生してNGOが国内問題へもアプローチするようになり、NGOからCSOになっていく」という話は、確かになるほどと思いましたが、これまで国内の問題に取り組んで来たNPOとどのように関わっていくのかが気になりました。また、「東京を通さない国際協力をやっていきたいという地方の声を聞く」という話には違和感がありました。「やっていきたい」というより「通す必要性がない」という事ではないかと。一方で、アドボカシーは首都圏の組織が国の動きを一番把握していると思いますので、各地域と連携していくことに意味があると思いました。
例えば、SDGsの動きについて日本政府のやり方もそうですが、各都道府県、市町村がどのような取り組みを進めているのかは、集約して学び合えるものがあるのではないかと感じました。全国の情報を集約する等は、余力のある大きな組織にやってもらえたら有難いですね。
「国際協力」というワード検索が激減しているという話がありましたが、NGOではなかなか食えないのも問題ですが、敷居が高いのも要因ではないかと感じました。横文字が多いですよね(自戒の念も込めて)。日本にいてもできる国際貢献がSDGsの中にあると思っています。世界で起きている様々な難しいものをかみ砕いて日本の文化や生活の文脈に落とす役割。日本以外の国のことをよく知っている国際NGOだからこそできることではないでしょうか。今後一層、国際NGOに求められる大きな役割のように思えた一日でした。北海道でも、多様なテーマについて一度に議論できる場を作っていきたいですね。

(文責:事務局長 有坂美紀)

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