実施報告:大学院生向け講座「実践環境科学総論II ~RCEの協働プランを考える~」(協働PJ_北海道大学大学院環境科学院)

P_20170425_180815北海道大学大学院環境科学院はRCE北海道道央圏協議会(RCEHC)のメンバーであり、特に実践環境科学コースはESDを重点し、地域にある知識や経験を大学院教育の中に組み込むとともに、大学の専門知を地域に活用することに取り組んでいます。今回、RCEHCとの協働プロジェクトの一環として、大学院修士課程の学生向けの「実践環境科学総論II」において、RCEHCの協働プランを考えるという連続講義を行いました。
本講座を受講した大学院生からの意見や感想を交えながら、講義の内容についてご報告いたします。

期間:2017年4月11日~7月18日まで(講義回数:計13回)
受講者数:8名(7人の留学生かつ研究生1名を含む)

 

<講義目標>
Ⅰ.世界の RCE(国内除く)から最終的に1つ選び、RCEHCとの交流プランを提案する。
Ⅱ.RCE メンバーと協働して、環境科学院の人材育成プランを提案する。

1.RCE北海道道央圏を知る
(1)RCE:Regional Centre of Expertise on Education for Sustainable Development とは
「21世紀の課題」とされるESD(持続可能な開発のための教育)を推進するため、国連大学は「グローバルRCEネットワーク構想」を2003年に開始しました。RCEは「Regional Centre of Expertise on ESD」という地域の専門知の拠点となることが求められています。現在、日本には7か所のRCEがあり、RCEHCは2015年12月に国連大学に認定されました。

(2)RCE北海道道央圏の能力を活かすには ~ESDとRCEの関係~
RCE_on_ESDESDでは、地域ごとに重要な課題を取り上げ、教育機関、行政、市民、NGO、企業が連携しながら、学校教育と市民や地域社会、企業が行う学校以外の教育すべてが相互に連携しながら進める教育を重視しています。「関心の喚起 → 理解の深化 → 参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置付けて、単に知識の伝達にとどまらず、体験、体感を重視して、探求や実践を重視する参加型アプローチをとることが大切です。
RCEは、ESDを推進するための先進的な取組事例となり、その活動内容を世界に発信し、ESDを広めていくための地域拠点です。地域の様々な関係者が協力し、実践を重視した教育によって地域及びグローバルな課題を解決していける土台となる環境を作っていくものだと考えます。

たとえば、RCEのメンバーは、他のメンバーや各関係者と共に様々なセミナーや勉強会等を開催し、互いの活動報告や情報を交換・発信することにより、自らが持つ能力にさらなる磨きをかけることができます。RCEの新たな関係者や組織を参画させることで、自分のプログラムの効果をよりよく発揮させることも期待できます。
また、RCEの交流の場に参加し、失敗や成功経験を積重ねることで、複雑な課題にもRCEのメンバーや関係者と協力することで解決しやすくなります。ESDに向け、地域の課題だけではなく、グローバルな課題を解決できるネットワークとして、RCEの力を合わせた協働プログラムを実施することが望まれます。

 

2.RCEHCの協働プランを考える

(1)関心を持った世界のRCE
調査したRCEと特に関心を持ったテーマは以下のとおりでした。
・PENANG マレーシア            (ESDの関係者が一堂に会する「カーニバル」の開催)
・MUMBAI インド             (レンガのリサイクル、自然写真)
・Greater Western Sydney オーストラリア(中小企業に向けた環境教育に関するセミナーの開催)
・Saskatchewan 中国           (cook book、データベースの作成、出版)
・Curitiba ブラジル           (ESDの国際的会議の開催)
・シャングリラ 中国            (小中高が協働する「水の学校」の実施)

RCE Penangの説明 この中で、受講生たちはRCE Penangの「Karnival Gaya Hidup Lestari or Sustainable Life Style Carnival」に注目しました。
注目した理由は、The Regional Sejahtera Education for Sustainable Development Network(RSEN)というESD の主要なテーマに係る協働事業に従事するペナン地域の関係者で構成されるダイナミックなネットワークの人々が、持続可能性に関するがアイデア、イニシアチブを共有するために一か所に集まるユニークなカーニバルである点でした。

しかしながら、世界のRCE と交流するためには、道央圏でも何か代表的なプロジェクトを行ってからのほうが交流しやすいとの考えから、RCE道央圏への興味を引くプログラムを計画することになりました。

 

3.北大祭を活用したRCEHCとの協働プログラム
北大祭についてレポート RCEHCのプログラムを考えるにしても、学生自身はRCEHCの活動に直接参加したことがないため、海外RCEにRCEHCを紹介することを難しいと感じていました。そこで、RCEHCのメンバーと協力してプロジェクトを行うことにより、RCEHCをよく知ることによって海外RCEにも活動を紹介できるようにしようと考えました。

具体的なプロジェクトを検討する中で、RCE Penangの活動からヒントを得て、北大生ならではの活動として「北大祭」を活用することを発想しました。特に、北大祭を選んだ理由は2つです。

(1)一般市民の人たちが多く訪れ、発信できる
(2)私たち(学生)に特有なプログラムを道央圏メンバーに提案できる

 

4.ワークショップのテーマ選択
実践環境k額総論Ⅱの講義の様子(1)なぜ、ジェンダーの課題を選んだか
RCEHCへのヒアリングによると、現在の日本において、一般市民の「持続可能な社会」に対する理解は環境保全に偏りがちで、社会問題もSDGsの一部という認識が薄いということでした。そのため、「ジェンダー」と「キャリア」の内容を選択することによって、社会問題も「持続可能な社会」の重要な一部と強調したいと考えました。また、環境科学院で社会問題に関するワークショップを行うことで、“環境問題”は社会問題(ジェンダーやキャリア)を含むという印象を与えることを狙いとしました。
また、ターゲットを北大祭中に環境科学院に集まる子供としました。ジェンダーやキャリアは、他SDGsの社会問題に比べ理解度が高い(飢餓や難民問題は子供にとって漠然なものである)と考え、子どもたちにとって日常生活に関わりが深いテーマとして選択しました。

(2)RCEネットワークの強化
現在のRCE道央圏のメンバーをみると、自然保全関係の者が多く、「ジェンダー」や「キャリア」関係のメンバーたちとの交流や合同活動が少ない。北大祭でワークショップを行うことによって、RCEメンバーの交流を促し、ネットワークを強化することができると考えました。

(3)発展
現在行われているワークショップは、その問題に興味を持つ者の参加が多く、幅広い発信が難しい。しかし、北大祭での開催であれば、一般市民に幅広く発信し、注目を引くことが可能です。

(4)欠点
現在、「キャリア」や「ジェンダー」に関するメンバーを巻き込み、協働でワークショップができるのではないかと考えているが、該当するメンバーの意志や主張に関して理解が不足しています。また、環境科学院に集まる子供の数が限られているため、参加者を呼び込むことも考慮しなければなりません。

 

5.受講生によるまとめ
RCEメンバーとの協働プランを立てるには、環境科学院の能力が充分ではなく、その前にRCEメンバーの能力および可能性を把握することが重要であることが分かりました。そのため、今回は新たな理解を基づく協働のプランの粗筋を提案するにとどまりました。

協働プランを考える受講生今回の講義により、RCEという組織の特徴や意義を把握することができました。その上で、重点は3つあると思います。
1点目は、世界レベルでも、地域レベルでもRCEというネットワーク組織から強さをもらうことができる点にあります。それぞれのメンバーの長所を組み合わせて、一人ではできないことを叶うことができるようになります。
2点目は、RCEのネットワークを通じて、大学(院)生向きだけでなく社会人向けにESDに関わる具体的な活動が実践できます。
以上の2点から、3点目は「think global, act local」という人気のセリフは、RCEの哲学に合うと思うということです。

 

◆◆RCEHCの協働プロジェクトとして◆◆
協働プランづくりこの講義の狙いは、学生さんたちに持続可能な地球という大きなテーマにおいて、世界的な出来事と北海道のような地域とがどのように関わり合っているか、また国を超えた地域と地域が協働する難しさと同時に、その面白さや大切さについて感じ取ってもらう機会をつくることです。学生さんたちがRCEの協働プランを検討する過程や感想から、目的は達成できたように感じています。ただ、もう少し、RCEHCのメンバーとの関わりがもてる内容にできれば良かったという面もありました。
しかしながら、分野やセクター、国境を超え、大学のような専門知だけでなく、「ローカル・ノレッジ(地域の知、市民の知)」としての専門性も集まっているRCEのような機能が果たすべき役割であると再確認することができました。

また、こちらからのインプットは最低限として、自分が学びたい事を「自ら学び取る」という姿勢を育てることの重要性にも気付かされる講義だったように感じました。

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